建設業における労災保険の取り扱い

最終更新日 2024年4月15日 by babylo

労災保険について

建設業における労災保険は、他の業種の労災保険とは違って、対象となる建設工事の元請会社が加入している労災保険によって、元請会社の労働者だけではなく、下請会社の労働者に対する労働災害に関しても補償してくれます。
そして、建設業においての労災保険料は、元請工事の金額を基準にして割り出されるというのも大きな特徴です。

建設工事の元請会社は、その建設工事が始まった日から10日経つ前に保険関係成立届を差し出す必要があります。
なお建設工事が始まると、保険関係成立届を出しているかどうかに関係なく労災保険に自動的に加入しているものとして取り扱われるのですが、保険関係成立届を提出する手続きを終えていないときに労災事故が生じたときには費用徴収制度を適用されることになるのです。

費用徴収制度は、労災保険に加入する手続きが済んでいないことによって労災保険料を支払っていない会社と同じように扱われる不公平さを解消するための制度になります。

行政機関から加入する手続きを済ませるように指導を受けたのに、事業主が加入手続きを行っていない期間に労災事故が生じたときには治療費等の保険給付額と同じ金額が徴収されるのです。
しかし行政機関から加入する手続きに関する指導を受けていないが工事を始めた日から1年以上経っても加入する手続きを事業主が行っていない間に労災事故が生じたときには保険給付額の4割の金額のお金が徴収されます。

労災保険関係成立票

労災保険関係成立票は建設工事現場に掲示することが必要です。掲示する必要がある内容は保険関係が成立した日付や期間、労働保険番号、事業主の住所や名前などになります。
他にも注文者の名前や代理人の名前も掲示することが必要です。
建設工事現場には加入手続きは労災保険関係成立票だけではなく、建築基準法に基づいた確認済証や建設業許可票も掲示する必要があります。

建設工事現場
引用:http://www.y-mainichi.co.jp/news/27076

労災保険において継続事業とは業務を終了させる予定がないものを指し、有期事業は業務が終了することが予定されているもののことを指すのです。
建設業ではない業種の会社は、倒産したり廃業したりしない限りは業務が継続するため継続事業の方に当てはまります。

建設工事については工期があるので終了する予定があり有期事業の方に当てはまるのです。
有期事業は継続事業と労災保険に加入する手続きが違っていて、基本的には工事現場を管轄している労働基準監督署が受け付けています。

一括有期事業

一括有期事業は、その中でも労災保険料の見込み金額が160万円未満であるか確定保険料が100万円未満の場合で、なおかつ請負金額が1億9千万円未満の建設工事のことを指すのです。
一括有期事業は特定の条件を満たしていれば、それぞれの建設工事をまとめて1件分の保険関係として手続きを済ませることが可能になります。

特定の条件とは各工事が労災保険が成立している工事の中でも建築や土木、その他の工作物を建設する工事や工作物を保存や改造、変更、修理、解体する工事、またはその準備をするための工事であることがまず挙げられます。

そして、それぞれの工事が同じ種類であることや各工事に関係する労働保険料を納付する事務が同じ1つの事務所で行われていることも要求されるのです。

厚生労働大臣が指定していない種類の工事の場合、各工事が事務所を管轄している都道府県労働局が管轄している区域や隣接している都道府県労働局が管轄している区域の中で行われることという条件も満たす必要があります。
また工事を行う区域は厚生労働大臣が指定している都道府県労働局が管轄している区域も含まれるのです。

単独有期事業

一括有期事業のときには工事を始める度に、工事が始まった月の次の月の10日までに一括有期事業開始届を差し出して7月の10日までに毎年、概算・確定保険料申告書や一括有期事業総括表、一括有期事業報告書を差し出して保険料を支払うことが必要になります。
そして一括有期事業の保険関係を成立させる手続きは元請会社の本店か支店を管轄している労働基準監督署が受け付けているのです。

一方で、一括有期事業に当てはまらない有期事業のことを単独有期事業と呼び、工事が行われる度に工事現場を管轄している労働基準監督署で保険関係の成立をさせる手続きを行い工事が完了する毎に保険料を支払う必要があります。

労働保険には雇用保険と労災保険が存在しますが、これらの保険をまとめて加入する手続きを進めることを一元適用事業と呼び、それぞれ別々に加入する手続きを進めることを二元適用事業と呼んでいるのです。
建設業は、雇用保険と労災保険に加入する手続きを、それぞれ別々に進める二元適用事業の方に当てはまることになります。

そうなっているのは、建設業では労災保険は、元請会社が対象となる建設工事を行う下請会社の労働者も含む全ての労働者に対して加入することになるので、下請会社は基本的に労災保険に加入しませんが、雇用保険に関しては元請会社と下請会社がそれぞれ別々に加入することになるので、雇用保険と労災保険の加入手続きを別々に分けて進める必要が生じるためです。